厚生労働省の調べによると、保育士の平均就業年数は約7年で、離職率は10.3%だそうです。
他の業種で保育士より離職率が高い職業もあるようですが、保育士は給料が低くなり手がいないことや、待機児童が増え続けていることから現在でも不足しています。
このことから国は、給与面を改善して保育士を確保するために、「保育士処遇改善等加算」の制度をスタートしました。
2013年から保育士の「処遇改善等加算Ⅰ」を開始し、2017年からは「保育士処遇改善等加算Ⅱ」を開始しました。
ここでは保育士処遇改善等加算のおおまかな説明と問題点について書きました。
保育士処遇改善等加算について
処遇改善等加算Ⅰ
2013年から開始された制度で、保育士の経験や勤続年数に応じて給与を改善したり、キャリアアップのための取り組みを行った保育園に補助金を支給したりするものです。
処遇改善等加算Ⅱ
「処遇改善等加算Ⅰ」に加えて、2017年から開始された保育士のキャリアアップ制度
この加算によって保育園に勤める全職員を対象に給与が2%引き上げられました。
2012年から段階的に保育士の給与が引き上げられていますが、2017年4月の引き上げによって、2012年と比べると約10%引き上げられています。
2018年には11%(月額約35,000円)と保育士への支給額は上がりました。
しかし、全職種の月の平均賃金と比べると約100,000円少ないそうです。
3つの新しい役職ができた
今までは保育士⇒主任⇒園長のみでしたが、保育士と主任の間に、「副主任保育士」、「専任リーダー」、「職務分野別リーダー」と新たに3つの役職が追加されました。
この3つの役職は、園長・主任保育士を除き、保育士限らず施設の全ての職種の職員や、派遣、パートの保育士が対象になります。
経験3年以上の方を対象としたキャリアアップ研修を受けていることと、指定の経験年数に達していることが必要で、園から選ばれた職員がなることができます。
そしてこの3つの役職に選ばれると補助金の支給対象者になります。
- 「副主任保育士」、「専任リーダー」⇒経験年数7年以上で施設の職員数の1/3が対象、月額40,000円支給。
- 「職務分野別リーダー」⇒経験年数3年以上で施設の職員数の1/5が対象、月額5,000円支給。(副主任保育士、専任リーダーの4万円の加算については、確実に4万円の処遇改善を行った上で、その他の職員に月額5千円以上4万円未満の範囲で配分することが可能。)
5千円以上4万円未満の配分について考えられるパターン(4万円加算対象者5人(総額20万円)の場合
パターン1
施設内での段階的なキャリアアップの仕組み作りのため、副主任保育士、専任リーダーの2人に4万円の手当を支給したうえで、将来的に副主任保育士などを担う人材4人に3万円ずつ手当を支給。
パターン2
副主任保育士、専任リーダーの2人に4万円の処遇改善を行うことで主任保育士の給与と差がほぼ無くなってしまう場合、副主任保育士、専任リーダーの2人に4万円の手当を支給したうえで、主任保育士に5千円以上4万円未満で手当を支給。
その他の職員に、残った金額を5千円以上4万円未満の範囲で手当を支給。
パターン3
施設内の職員の給与のバランスに配慮し、副主任保育士、専任リーダー2人に4万円の手当を支給した上で、2万円の手当を5人に、1万円の手当を2人に支給。
出典 技能・経験に応じた保育士等の処遇改善について (内閣府子ども・子育て本部)
保育士処遇改善等加算の問題点
①国から補助金として支給されるものとなるため認可保育園のみが対象になる。
②どう分配するかは園に任されているので支給額に偏りが出たり、支給されないケースがある。
③保育士の需要や置かれている環境、地域により、支給される額に差がある。
④経験年数が7年以上ないと40,000円の支給対象にならない。
②どう分配するかは園に任されているので支給額に偏りが出たり、支給されないケースがある
「副主任保育士」、「専門リーダー」、「職務分野別リーダー」の条件を満たしていても、園から選ばれなければなれません。
また、副主任保育士、専任リーダーの4万円の加算は、確実に4万円の処遇改善を行い、その他の職員には、月額5千円以上4万円未満の範囲で園が自由に配分することができることになっているため、支給額に偏りが出る可能性があります。
同じキャリアがあっても、園から選ばれなければ役職に就くことはできませんし、処遇改善の恩恵が受けられないのです。
また、実際にトータル7億円分が支給されていなかったことがあったようです。
出典 保育士の賃金7億円使われず?会計検査院指摘 (日本経済新聞)
③保育士の置かれている環境、地域により、支給される額に差がある。
地方など、人口が少なかったり、保育の需要が低い場所では自治体の財源が乏しく、保育士に確実に支給されていないこともあります。
④経験年数が7年以上ないと40,000円の支給対象にならない
7年以上の経験がないと40,000円の対象にはなりません。
例えば正社員で5年働いてから結婚をして、今度は別の保育園でパートで2年働いたとしても、支給対象者は園で選ぶので選ばれない可能性があります。
一度仕事を辞めてしまうと、対象になりにくいかもしれません。
国が保育士の給料のために補助金を出していても保育士の処遇改善のためにお金を使っている園は少ない
経験年数が7年以上で、園から選ばれて役職に就き、確実に40,000円を手にする保育士がどれくらいいるでしょうか。
経験年数が3年以上で、研修を受けても園から選ばれなければ「職務分野別リーダー」にはなれませんし、どのような基準で選んでいるのかも分かりません。
選ばれても、5,000円~40,000円という幅があり、保育園が自由に支給金額を決めてしまうのです。
処遇改善を進めている保育園を一人で探すことは難しいので保育士転職サイトに登録して相談するほうがいい
あまりにも給料が低かったり、おかしな点がある保育園は、保育士に支給するべき補助金をを支給していない可能性もあります。
園の独断で新しい3つの役職を決めたり、支給額を調整できることは、園側に都合の良い職員だけが恩恵を受けられるという不平等にもつながります。
また、保育園は国から支給されている委託費を保育士の給料に適正に使わないという、委託費の弾力化の問題もあり、転職を一人で決めてしまうことはリスクがあり、同じような園をまた選んでしまうかもしれません。
このことから転職する時は、保育士専門の転職会社を通じて探すことをおすすめします。

